※今回は不倫のことを書きます。実際に私がしていたことを書きます。苦手な方は閲覧しないでください。
26歳の春に彼に出会い、27歳になったばかりの夏に彼を好きだと気付いた。
プロジェクトが一緒で、帰りに夕飯に誘われることが何度かあった。
初めて誘われた時、既婚者と2人きりで食事はちょっと・・・とものすごく警戒していて、最初の数回は何度か嘘をついて断っていた。
誘われるうちに、愚かな私は「食事といってもファミレスでの夕飯だし・・・」と思い直し、友達として、先輩後輩として、夕飯に行くことをOKした。
今思えばその時点で十分黒だったのだと思う。
彼の年齢は私より1つ上で、25歳の時に3つ年上の奥さんと結婚していた。
セックスレスで・・・とか、嫁が家にあまり帰ってこなくて1か月に10日くらいしか家に居ないんだとか、とりあえず家庭がうまくいっていない話をよく聞かされた。
その話自体には嘘はなかったと思う。
楽しい夏の雰囲気が漂い始める初夏のある日、ちょっとしたミスで私は終電を逃し2人でオールした。
その時点でもう好きだったのだと思う。
好きになってから半年間悩んだ。
離婚するまで待とうと思った。
でも離婚しなかった。
肌寒い季節になった頃、私たちは今まで以上に仲良くなった。
休日に一緒に食事をしたり、当時私が飼っていたペットを連れて動物病院に一緒に行ったり、母校のクリスマスツリーを見に行ったりした。
季節は過ぎて、ずいぶん寒くなった会社の忘年会の帰り道、「もう2人で食事に行くのはやめよう」と私は言った。
自分の望む関係を実現するための条件が揃わないことを我慢するのに限界を感じていたのだと思う。
彼はすぐに返事をしてくれなかった。
ずっと黙って悲しそうな顔をしていた。
私は何も言わなかった。
しばらくの沈黙の後、終電を逃してもいいから話し合おうと私は言った。
電車に乗り、24時間のファミレスでコーヒーを頼んで話をした。
私は彼に好きだと言った。
言ってはいけないと思ったけど言った。
とても長い沈黙の後、彼は小さく、俺も好きですと言った。
店を出て、長い横断歩道の信号を待っている時、私からそっとキスをした。
それが不倫の始まりだった。
付き合ってる時は普通のカップルとほぼ変わりない交際だったと思う。
泊まりに来たこともあったし、終日ディズニーシーで遊んだこともある。
平日の何日かは外食し、毎週末会って、2人で色んなところに行った。
ラクーア、横浜、動物園。
何もかも普通だと思っていた。
彼に別に帰る場所があるということ以外には。
交際開始からもう少しで半年・・・となるゴールデンウィーク。
1週間LINEが未読のままだった。
この頃、私も色々考えすぎていてゴールデンウィーク明け前の最後の休日、別れてくださいとLINEした。
いつも深夜2時くらいにしか返信をしてくれない彼がすぐに返信をしてくれた。
「soraさんにとってよくないことだと分かっていたけどこの日まで続けてしまった」、「知ってると思うけどsoraさんが好きだよ」とか色々。
後日、よく一緒に行っていた焼き鳥屋さんで話をした。
「私ね、ずっとこうして続けていればいつか付き合えると思ってた。今の奥さんとの生活がずっと続くようには思えなかったし、3年くらいすれば・・・とか」
無理だよね、と心の中で呟いて、「お会計」とそっとこぼして席を立った。
そうして私たちは別れた。
6月を過ぎれば私の誕生日、そこからさらに1か月後には奥さんの誕生日が来ることを知っていた。
きっと空しい思いをすると知っていった。
だから、その前に・・・と。
しかし私は彼を忘れられなかった。
小さな会社で毎日顔を合わせるし、嫌いな所などないまま別れを切り出したから・・・。
この頃、本当に小さなきっかけでプロ野球が好きになり、ヤケクソみたいに野球観戦に時間を割いた。
球場で家族連れを見るのが悲しかった。
何かが少し違えば手に入れることができたかもしれない幸せ。
見込みも全くない現状。
暑く明るい球場で、一人ぽつんと座っている自分がとても惨めな存在に思えた。
その年に、ファンになったヤクルトが優勝するかもしれないと、ドキドキとワクワクが渦巻いていた秋先のある日、休日出勤をしたら彼がいた。
帰り際ポツンと「野球、詳しいんだね。」と声をかけられた。
私は彼に近づいた。
あの日みたいにまた、自分からキスをした。
すごく好きだとその時思った。
そうしてまた関係が元に戻ってしまった。
そこからはまた同じことの繰り返し。
だけど、私の気持ちは少しずつ彼から離れていった。
LINEの返信は変な時間にしか返ってこない。
電話しても絶対出ない。
一緒にお揃いの家具を買いに行こうと言われたけど実際は買ってくれなかった。
彼の好きな音楽や本が私と合わない。
ある日、彼は自分の友達を私たちが在籍している会社に紹介して入社させてあげたいと言った。
埼玉に住んでいるから、俺の家にしばらく居候させようかなと思っている、とも。
そうなんだ、奥さんはOKしたの?と何気なく聞いたら、なんでもないように、うん、と答えた。
その時一気に、もういいかなと思った。
結局離婚する気がなさそうだな、と。
共通の知り合いができて惨めな思いをするのは私なのに、そんなことは全く考えていないようだった。
私はこっそり恋活(pairs)を始めた。
その2週間後にはお見合いパーティーに初めて参加した。
色々な男性に誘われて、やり取りをして、少しずつ彼への連絡がおざなりになっていった。
私は別の男性を好きになりかけていた。
そんな矢先、彼から「嫁がpairsやってて、どういうことってLINE送った。連絡待ちしてる。そういえばsoraさんもやってるよね」というLINEが届いた。
彼の独身の男友達がpairsをやっていて、一緒に見ている最中に奥さんと私のアカウントを発見したらしい。
私はすぐにpairsを退会し、電話して話したいと申し出た。
彼の答えはNOだった。
嫁とのことも含めてしばらく考えたい。そっとしておいてほしい、と。
1週間連絡せず、私も考えた。
もう心は決まってた。
その後、なんとなく和解と仲直りをしたけれど私の心には彼と一緒にいたいという気持ちはもうほとんどなかった。
彼の友達は結局不採用となり安堵したものの、今度はその結果に不満を持った彼が会社を退職すると言い出した。
あぁ、なんかタイミング的にちょうどいいかも、と私は思った。
無事に転職活動を終え、有給消化に入る彼から「soraと俺のことで変な噂を立てられてるみたいで。退職前に変な噂が流れるの面倒だし有給入るまでは連絡やめとくね」と連絡が来た。
会社の同僚たちと飲んだ帰りらしく夜の1時くらいに届いていた。
飲み会でネタにされたかなんかだろう。
変な噂?
噂じゃないし。
本当だし。
不倫してるじゃん。
面倒?
何が?
そう思った。
寝ぼけ眼で私はキーをタッチした。
「退職も決まったことだし、別れるつもりなのでもう連絡しなくていいです。あなたのこと、応援してる。今までありがとう。」
スマホを裏返してまた眠りについた。
朝5時くらいに目が覚めて、確認すると「え、なんだそりゃ」「そっか」「さよなら」と三言返信が来ていた。
私は既読にして何も返さなかった。
彼は眠れなかったのか、既読にした2時間後、「話し合おう」とLINEが来た。
こういう時だけ返信早いね。
夕方、彼が私の地元に来た。
別れた方がいいと思う。
pairsやってる奥さんを許すんだったらもう離婚は無理でしょう。
だったらもういい。
別れてください。
確かこんなことを言ったと思う。
しょうがないか・・・というように彼は私に別れを告げた。
奥さんと別れることを考えるとも待ってくれとも言われなかった。
彼の最終出勤日、「直接会ってお礼を言いたかったけど会社でのこともプライベートのことでもありがとう」という未練がましい社内メールが届いた。
私は返信しなかった。
それが最後だった。
出会って別れるまでの2年間。
26歳から28歳。
結局最後まで、当たり前だけど2番手だった。
不倫は悲しい。
一番になれないし、未来がない。
お金があって健康でも、一緒に住むことも子供を産むこともできない。
連絡は不自然な時間にしか返ってこない。
誕生日プレゼントももらえない。
口約束ばかりで旅行もドライブも行かなかった。
お揃いのものも1つもない。
奥さんは、全て手に入れてるのに、私には1つも手に入らない。
それでも不倫をしてたのは、自分の人生を振り返った時、彼と付き合わなかったら後悔するだろうなと思ったから。
そんな風に思ったことは今まで一度もなかったのに。
自分から告白したのも一度だけ。
手に入らないから素敵に見えるんだよ、と世間は言う。
でも、それ抜きにしてもあなたはとても素敵だった。
冷めたら、私と結婚してたら、素敵に見えなかったのかな。
そんなことはないだろう。
たぶん・・・。
今思い出しても、後悔する気持ちが全然ない。
あなたのことが、好きでした。